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  • 2014.11.17 Monday
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バレエ「三銃士」:実は高難易度バレエと一筋バッキン

3月8、9日の牧阿佐美バレヱ団「三銃士」公演について、銃士ファン的に。

●現在唯一生き残っているバレエ「三銃士」

今回牧で上演された「三銃士」、振り付けはアンドレイ・プロコフスキーによる、一般的にはプロコフスキー版「三銃士」と呼ばれるものです。
バレエの「三銃士」はこのほか、70年代のアメリカ版、ソ連版、2000年代のパリ・オペラ座ガラ公演用のラコット版、英国のノーザンバレエシアターで上演されているニクソン版と呼ばれるものの5本が確認されていますが、米ソ版2作品はもう埋もれてしまい、実質上幻の作品で映像はおろか、記録もどの程度あるのかといった状態です。

パリオペ版は学芸会的なんちゃって版ながら、内容は相当に本質を突いているものとはいえ、1度きりの余興公演みたいなもので、これもある意味幻の「三銃士」です。

ニクソン版はレパートリーに取り入れているバレエ団もいくつかあり、舞台も衣装も非常に豪華(↓エストニア国立バレエ団のプロモ動画)。
https://www.youtube.com/watch?v=14Szxucn0v8
お話は首飾り事件を中心に、ダル&コンスと三銃士の、5人の冒険ストーリーのような内容でしょうか。
見に行きたいと思っているのですがなかなかタイミングが合わず、結局最後の再演から4年くらい上演されていません。

ですから今回牧バレエで上演されたプロコフスキー版は唯一生き残っているバレエ版「三銃士」ともいえ、ある意味とても貴重な公演だったといえます。

●ストーリーはオーソドックスぶった切り

そのプロコフスキー版ですが、お話的には「三銃士」の首飾り事件をオーソドックスにまとめたもの。
ダルが首飾りを取り戻して、コンスとの愛のパドドゥを踊って幕切れです。
いわば起承転結の起承でお話は終了です。

実は初演時はそのあとミレディがコンスを……という原作準拠の「転結」までしっかり描かれていたんですが、再演時から、多分後味悪いとか、そんな理由で丸々カットされてしまっており、非常に尻切れトンボな内容になってしまっているのが残念無念。

衣装も三銃士がお揃いなもんだから、ダンサーの顔が見分けつかないと三羽一絡げですし、コンスタンスさえもクライマックスはその他女官たちとおそろいの衣装になってしまうので、ダンサーに個性がないと完全に埋没してしまいます。

しかもプロコフスキーさんがこの尻切れ改訂に手を入れないまま亡くなられてしまい、著作権が発動してしまっているため、多分このバージョンは衣装ともどもしばらくこのままです。
本当にどうしてこんな変なバージョンにしてしまったんでしょう。

●実は難易度高かった

ただ、お話的にはオーソドックスとはいえ、バレエ的にはおそらく難易度の高い、緻密なものではあります。

なにしろ男性の踊りがほとんど剣付き(フェンシングの剣ですが)。
剣を持ったことがある方ならわかると思いますが、それなりに重さがあります。

こちらはアメリカのピッツバーグ・バレエ団で上演されたプロコフスキー版の動画でダルのパリ到着シーン(↓)。
https://www.youtube.com/watch?v=0B4E6bi1mI0

ダンサーにしてみたら「剣」という余計な負荷がかかった状態でアラベスクだのザンレールだの……つまり片足でバランスを取ったり飛んだり跳ねたりしなければならないわけですから、いつもと勝手が違うわけです。
これは慣れるまでかなり大変なことですし、そういう意味では牧の男性陣はよく踊ったと思います。

しかもそういう状態で、振り付けのあるチャンバラ踊りなんかもやるわけです。
バレエですから、着地なんかもワイルドに、しかし美しく降りないとならない。
結構これはハードです。

踊り的にもほとんどすべての登場人物にソロ(バレエではヴァリエーションといいます)があるほか、パドドゥ、三銃士のパドトロワ、ロシュフォールと6人の親衛隊による群舞など、非常に見せ場が多い。

なかには王妃とコンスタンスの、女性同士のパドドゥもあり、これはいつも支えてもらう側の女性が支える側になるわけで、これもまた勝手の違うテクニックが必要になってくる場面です。

さらに踊り以外のマイム(芝居)の部分での要求もとても高い。
ほかのキャラが踊っている横で、ダルがコンスを口説くとか、ダルが戦っているところで三銃士がダルの品定めをしているとか、結構真ん中以外でも見るところが多いのですね。
この真ん中以外のシーンを、踊りに目がいっている観客を引きつけ、しかし踊りを壊さずに見せるというのは、これまた演技力はもちろんのこと、テクニック……いわば舞台経験も必要なわけです。
言葉が封じられたバレエは踊りとマイム、目線や間といった芝居でお話を伝えなければなりません。
こうした芝居要求度が高く、ストーリー重視のドラマ性の強いバレエを「ドラマティック・バレエ」といいますが、このプロコフスキー版「三銃士」はそのジャンルに分類されるでしょう。

ですから、たとえ尻切れトンボでも、芝居も踊りもしっかりでき、かつダンサーの個性がしっかり立ったバレエ団がやったら、かなり見応えのあるものになる演目だとも思います。

そういう意味では牧バレエにとっては非常に難易度の高い作品でした。
というか、おそらくこの難易度の高い演目をしっかり完璧に踊り、かつしっかり演じられる日本のバレエ団は、新国立劇場バレエ団くらいだろうと思います、今のところ。

●バッキンは王子様

キャラ萌えでいくと、今回は多分バッキンガム公爵ファンにはかなり美味しかったかもです。

ダル&コンス、アンヌ&バッキンのカップル主体で話が進みますし、配役を見てもダルの次はバッキンに位階の高いダンサーが配役されていますし。
まあ、バッキン王子ですなw

しかもこのバッキン、非常に身持ちが堅い。
ミレディが華麗な誘惑の踊りで迫っても墜ちません。
王妃大好きバッキンにとってはミレディも盛りのついたメンドリにしか見えず、目を背けて「まだ終わらないのか」という表情で、終わったらさっさと退散。
実にアンヌ一筋の、恋に心燃える情熱的なバッキンです。

ですから「コンチクソー」と怒ったミレディにぐっさり刺し殺されても決して首飾りを離しません。
すごい執念です。
天晴れバッキン。

前回公演は菊池ロシュフォールと田舎者丸出しの森田ダルタニャンが光っていましたが、今回はバッキンでしたね。
特に9日の中谷バッキンは表情も目線もクールで熱くてなかなか良かったです。

三銃士はしっかり者だけど酔いどれのアトス、おしゃれなポルトス、女好きでやんちゃなアラミス、という感じでしょうか。
ヴァリエーションはアトスが酒飲みの踊り、ポルトスが見栄っ張りの踊り、アラミスが恋に燃える色男の踊り、といったところ。
アトスが一番小さくて、剣で床を叩いちゃう(笑)
個人的にはアトス役の篠宮君、あれだけ踊れるならあの小ささを生かしてダルタニャンをやればよかったのにと思いますが、牧はダンサーの個性より、位階から順に役を振るからねぇ…(-_-;)

ちなみに今回のバッキン役には前回公演でアラミスを踊った方が配役されていました。
アラミス→バッキンルートだわね(笑)
アラミスは若手のポジションですな。

ニヤリだったのは三銃士VSロシュフォールと親衛隊のチャンバラですね。
なんか原作通りアラミスは2人を相手にするとか、結構芸が細かいです。

そんなわけで、次はぜひ念願のニクソン版を見たいもんです。
BBCで「三銃士」放送が始まるというし、ノーザンバレエでなんとか再演してくれないものか。
いや、実は自分、脚本書きたいんですけどね。
自分が脚本家になったつもりで必要な要素を残しつつ、狙った顛末に向けていろいろ引いて整理していくと、「三銃士」のお話で「当然」と思われてる部分が、実は不要かもしれないとか、結構いろんな発見があって面白いのですよ、これが(笑)

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